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2022-10-01

フィッシュマンズのこと

かつて、フィッシュマンズというバンドがいました。

今も活動していますが、敢えて「かつて」と書いたのは、やはり私にとってフィッシュマンズはあの頃のフィッシュマンズだったから。
昨年は30周年の節目の年だったようで、ある日とっても久しぶりにタワーレコードを覗いたら記念本「永遠のフィッシュマンズ」と目が合いまして。一気に彼らの音楽が脳内で鳴り響きました。

映画:フィッシュマンズ」は172分の長尺でしたが、長いなんて微塵も感じず、寧ろ永遠に終わらないで欲しいとすら思うほど。
いつまでも聴いていたいフィッシュマンズの音楽そのもののような映画で、終始、胸がいっぱいでした。

そういえばこのブログって仕入日記だけじゃなくて色々書こうと思ってはじめたんだった、ということで、今回は店主の思い出話などにお付き合い頂ければと思います。
長いので、興味のある方だけどうぞ。

***

私がフィッシュマンズを聴きはじめたのは高校生の頃。
なんで知ったのか今となっては記憶にないのですが、「空中キャンプ」というアルバムからでした。
こんなブログを書いてはいますが、コアなファンという訳ではなくて。当時のメンバーのライヴは観ていません。でもリリース当時、これはなんかすごいアルバムだぞ、と思ったのを覚えています。

確か高校の夏休み、今は亡き父と2人だけで祖父母の元へ車で向かうことになりました(片道7時間くらい)。
思春期真っただ中ですし、それはもう嫌々で。その道中この「空中キャンプ」を流していたら、父から「頭がおかしくなりそうだから止めてくれ」と言われてムッとしたのは、今となっては良き思い出。
この話をダンナにしたら、「正しい反応だね」。
確かにね・・・父のフェイバリットは堀内孝雄でしたから。

その後に出た「LONG SEASON」は1曲のみ35分という驚きの内容。
でも35分と言わずずっと聴いていたいような、そんなアルバムでした。
周囲の友達は大体ミスチルとかを聴いていたこの頃(未だにあまり良さが分かりませんごめんなさい)、こういうポップスの枠からはみ出まくる楽曲に触れたのは、初めてだったような。
そう思うと、私の人生での音楽の聴き方に、フィッシュマンズはかなり大きな影響を及ぼしているのかもしれません。

結果的に最後のアルバムとなった「宇宙 日本 世田谷」に収録されている「WALKING IN THE RHYTHM」。
そのPVを初めて観た時のワクワク、今も覚えてます。当時スペシャとMTV、よく観てたなぁ。

1999年、バンドの中心人物だった佐藤伸治が33歳で急逝します。
私は大学生になっていて、ただただ、兎に角びっくりしました。
でも前述の通りコアなファンではなかったので、薄情な話ですが特別悲しむでもなく(当時はUKロックにはまっていました)、結局ライヴ観てないな~残念だな~くらいの気持ちでした。なんかすみません。

佐藤伸治という人の存在が圧倒的だったのもあって、彼が亡くなったということは、このバンドはもう終わりだなと私はその時に捉えてしまって。それからは頻繁に聴くようなこともなくなりました。
でもなんとなく私の中に残り続けていて、たまにふと聴きたくなる、そんな音楽でした。

フィッシュマンズがまだ活動している。
それを知ったのは、2005年のRising Sun Rock Festivalに出たらしいと耳にした時でした。しかも錚々たるサポートメンバーを揃えて。
あ、やっぱり彼らはすごいバンドで、すごい音楽を奏でていて、それは私が思っていた以上にたくさんの人に響いてたんだ。
この時そう思って、なんだか勝手に感慨深くなったのを覚えています。

1996年に「空中キャンプ」を買って聴きはじめて、あれから26年(!)。
私はやっぱりずっとコアなファンではなくて、ライブは2006年のフジロックを少し観ただけ(入場規制がかかってまともに観られませんでした。泣)。
だけど事あるごとに、ふとした時に聴いてきて、26年ずっとずっとそこにある。
私にとってフィッシュマンズはそういうものです。

改めて映画を観て、本を読んで、アルバムを聴き直して、26年前に彼らに気付けて良かったと、心から思います。
その当時「なんかすごい」と貧相なボキャブラリーで直感的に思っていたことの答え合わせもできたようで、嬉しいです。
そしてフィッシュマンズはこれからも続いていくのでしょう。

***

実は昨年の夏、映画を観た直後に下書きをしていたこのブログ。
1年以上寝かせちゃったけど、やっぱりUPしようかな・・・と手を入れている今、夫の作業場から完全に偶然に「ゆらめきIN THE AIR」が聴こえてきました。
人生にはこういうことが稀にあります。

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