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2020-07-23

仕入日記:風見窯

運転に自信がついて小鹿田に車で行ける時が来たら、ぜひ寄ってみたい。
そう思っていた窯元が、福岡県八女市にある「風見窯」です。

母が八女出身なので何度も八女には行ったことがありましたが、男ノ子焼の里という場所があることは最近まで全く知らず。
男ノ子焼がどんな焼きものかも知りません。

風見窯の杉田さんについて事前に知っていたことといえば、ふもと窯で修行したこと、独立して3年目で、ほぼ地元の原料で1人で焼きものを作っていること。
画像しか見たことがなく、美しい青瓷だけど実物はどんなだろう?と楽しみにしていました。

この日は暑い日でしたが工房に入ると火が焚かれていて、釉薬の原料である白石を乾燥させていました。
風見窯の釉薬はこれがベースで、ここに藁灰や木灰などを調合することで独自の色を出しています。

展示場に並んでいる品はきれいな形が多く、ふもと窯で修行されただけあるなという感じ。
そこに独特の美しい釉薬が掛かっていたり、小代焼を思わせるような藁灰釉が掛かっていたり。

隅っこにはもう廃番だという土も釉薬も違う品がいくつか。
地元で陶土を探し当てるまでは仕入れていたということで、その頃のものだそうです。
私はこの廃番のものよりも、今取り組んでおられるものが断然好き。
その土地から生まれたものならではの、仕入れた原料では出し得ない絶対的な風情や魅力が出ているように思います。

ここに来た当初、八女には陶土になるような粘土はない、と言われていたそうです。
しかし勉強熱心な杉田さんは史実を踏まえ、あるはずだと思ったと。
そもそも400年前、男ノ子焼の発祥がこの地だったということは、この地で原料が揃ったからに違いないと考えたのです。

2年ほど探し続けてようやく見つけ、そこからは地元で調達した原料を使った焼きものに切り替えました。
その熱心さには頭が下がります。
今はその陶土や釉薬の特性を研究しながら、方向性を作っていこうとされています。

陶土も釉薬も1人で作るのは、とても大変なことです。
轆轤を挽くよりも、その前段階の作業が圧倒的に多いと杉田さん。
ですが話していて感じたのは、焼きものや手仕事への思いの強さ。
その思いをぜひ持ち続けて、作り続けて欲しいなと思いました。

今回は定番になろうとしている、使いやすそうな小鉢などを選んできました。
これからが楽しみな熱心な若手陶工の品、ぜひOnline Shopでご覧下さい。

ほとんど残っていないという男ノ焼の壺を見本にしたものも。
こういうものも、いつか手に入れたいですね。

ちなみに・・・杉田さんの焼きものは男ノ子焼というわけではありません。
柳川藩の御用窯だった男ノ子焼は、300年以上前、80年ほどで途絶えてしまっています。
残っているものもごく僅かで、男ノ子焼がどんな焼きものだったのかを知ることも今では難しいようです。
小代焼との関係性も様々な説があり、謎に包まれた正に“幻の窯”ですね。ロマンがあります。

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