仕入日記:百草陶房(むむくさとうぼう)
待つこと1年。遂にご紹介できる日が来ました。
沖縄・知念で作陶に励む、百草陶房(むむくさとうぼう)の伊良部あゆさんの品です。
店主が工房を訪ねたのは2025年2月のこと。
届くのを今か今かと、心待ちにしておりました。

北窯・松田米司工房に2024年6月まで約6年ほどおられ、独立した伊良部さん。
親方の作る焼きものに倣った沖縄らしいもの作りで、ほどよい厚み、重み、そして筆捌きのいい明るい絵付けに心惹かれます。
工房は間借りではありますが、眼前に美しい沖縄の海が広がる、これ以上ない贅沢な立地。
寝ずの番の窯焚きも、このロケーションなら頑張れそうですね。

間借り先の工房には灯油窯があり、薪窯に近い焼き上がりになること、それから灯油窯の窯焚きの経験者が近くにいることも利点のひとつ。
昔からのご縁があって使わせて頂いているのだそうです。

伊良部さんは宮古島のご出身。
沖縄本島に移って10年ほどまったく違う分野の仕事をしていましたが、沖縄のもの作り、しかも自分の手で完結できる仕事をしたい、そんな思いがずっとあったそうです。
焼きものである必要はなかったそうですが、たまたまタイミング良く飛び込んできたのが、松田米司工房の弟子募集の話でした。

独立してすぐは、何を作れば良いのか分からず困り果てたそうですが、親方から「まずはこれまで作ったもの、見てきたものを、自分ひとりでやってみる、それで良い」と言ってもらい、手を動かしはじめました。
そのお話しの通り確かに親方の焼きものに近しい雰囲気ではありますが、滲み出る伊良部さんらしさがあるのも事実。
なんというか、自分で完結できるものを、という言葉にも表れていますが、自身が納得できるもの作りがしたい、そんな思いが伝わる品々だなと、納めて頂いたものを眺めながら感じました。

やちむんらしさを意識する弟子たちが、決して奇をてらったものを作らずとも、それぞれに違った個性を放ちはじめていく様は、見ていて楽しいものです。
伊良部さんの焼きものもまた、作り続けるにつれてより「らしさ」がはっきりしてくることでしょう。
今は自分が何を作るのが楽しいか、向いているのかを探りながら、自分の焼きものにしていきたいと、そんなことを仰っていました。

ふと思い出したのは、かつて店主が亡き師匠から聞いたこと。
鈴木繁男さんが砥部で絵付けの指導にあたった時の話です。
「誰にでもできる絵付けなら教える」そう言って意匠を考え、指導した鈴木さん。
この人にしかできない、唯一無二、それは私たちにとってひどく魅惑的な響きですが、健やかな美というのは、それを狙っている内には生まれないものです。
柳宗悦も言ったように、美は追うものではなく随いてくるもの。
まだまだ伊良部さんの作陶人生ははじまったばかりなので、これから彼女の手からどんなうつわが生まれてくるのか、楽しみで仕方ありません。

まずは出張販売で一部を先行してご紹介し、3/21(土)から糸島の店頭にズラリと並びます。
ぜひご覧になりにいらしてください。












