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2023-04-06

仕入日記:西川登竹細工

うつわ屋という感じで営業している当店ですが、気が多い店主は実はいろいろと扱いたいと思っておりまして。店主ひとりの小さなお店なのでたくさん増やすのは難しいですが、既にご紹介している北谷竹細工博多曲物もその一環です。
かござる系も好きで個人的にたくさん持っていますが、既に亡くなった作り手のものも多く、その土地土地の竹細工文化がどんどん失われていっているという危機感を少なからず感じています。

そんな中で今回ご紹介するのは、佐賀県武雄市の「西川登(にしかわのぼり)竹細工」です。かつては何百軒と竹細工の仕事をしていたこの地域でも、今は栗山商店ただ一軒となりました。

斯く言う栗山勝雄さんもまた、元々は竹細工の仕事はしていませんでした。しかし周りから瞬く間に竹細工をやる家が無くなっていく中、この文化を残さなければとご夫婦で考えたそうです。
今になれば、亡くなった先代(栗山さんのお父様)から教えてもらっておけば良かった・・・とも感じておられるようですが、時代もあってか手取り足取り教えるようなタイプでもなかったとのこと。結局夫婦で大分まで勉強しに行ったりしながら、何とか技術を身につけて今に至ります。
ちなみにご主人が竹を採りに行き、奥様が編み、縁の仕上げはまたご主人が、という夫婦二人三脚の仕事。先代もそうされていたのだそうですよ。

職人はどの世界でも若い内に習った方が良いとされます。けれども、土地の文化を守るために出来る限りのことをしよう、そんな気概がご夫婦のお話からは感じられて、しかも現在は後進の育成にまで動かれていて、店主は感謝しかありません。
こうして繋がれたバトンを若い方が受け取ってくれて、そこから西川登のもの作りを踏襲しつつ技を磨いていってくれたら、どんなに嬉しいことでしょう!

しかし若者が竹細工を生業とするには技術以外の課題があります。
職人の仕事というのはどんなに贔屓目に見ても地道に黙々と、コツコツと、毎日毎日繰り返す単調なものです。向き不向きもあるでしょうが、仕事の中身ではなくて孤独に耐えられなくて辞める人も多いと聞きます。
出来上がったものを見てその文化的背景を聞くと、なんて素晴らしい有意義な仕事!そう感じる方も多いと思いますが、光が当たるところがあれば、一方で影となる部分もあります。多様化して簡単にあらゆる情報が手に入る現代、その影に押し潰されてしまう若者が多いというのも頷ける話です。

代々受け継がれている産地(当店で扱っているものだと例えば小鹿田焼)であれば、周囲に同じ仕事を生業にしている人がいて、家族や友人もいるので良いのです(それでも皆、今は楽しいけど最初はやりたくなかったと口々に言います)。一度何かしらの文化が途絶えた場合、仮に他の地域から一念発起して挙手する若者がいたとしても、技術を持つ人もいない、その上に心の支えになる家族も同業者もいない、そんな状況で再興することがいかに困難か。

栗山さんはそれでも、何とか西川登の竹細工を未来に残そうと奮闘されておられます。店主ができることと言えば、西川登の竹細工を少しでも多くの方に知ってもらって、使ってもらって、ユーザーが次世代の担い手の心の支えになれるように、それしかないのかなと感じています。
今は便利で安くて扱いも簡単、そんな大量生産品が溢れかえっているけれど、竹細工は少しだけ手を掛けてあげれば何十年と使える、そういう品です。難しく考えずに手に取って頂けたらと、切に願います。

最後は栗山さんの良い笑顔で。SHOP覗いてみて下さいね。

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