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2022-06-20

小鹿田皿山の日常

小鹿田の窯出しにはこのところ続けて通っていますが、当然ながらその日は作っているところは見られません。
改めて轆轤を挽くところを見ておきたいなと思い、6月上旬に仕事を見せてもらいに行って来ました。

今回は久しぶりにバスで向かいます。
福岡の天神から高速バスでまず日田バスターミナルへ。そこからは1日3便しかない皿山行きのバスに乗り換えです。

時間に縛られるので不便ではありますが、運転が得意でなく公共交通機関に乗り慣れている店主からすると、断然バスが楽。しかも日田駅からはいつもと違う道を行くので、景色を眺めるのも新鮮で良かったです。

窯元2人には「なんでバス?」と笑われましたが・・・
まぁ若い頃から運転に慣れている方には分からない感覚ですよね。

皿山に着くのが12時半頃のバスになるので、着いたらとりあえずそば茶屋へ。
結構気温が上がっていたのでざるそばと迷いましたが、店主は冷え性なので温かいごぼう天そばにしました。
いつもながら、うつわが良いんですよね。元々の作りも良いですが、使い込まれた何とも言えない魅力があります。

この日は天気が良かったので、挽いたうつわを沢山天日干ししていました。轆轤を挽く合間に回転させて日に当たる場所を調整し、均等に乾くようにします。
伏せ合せているものは上と下とで日の当たり具合が変わるので、回転させる角度も変えます。そうした些細なことが、うつわの仕上がりを左右するということでしょう。

窯元の坂本浩二さんと、息子の拓磨くん。小鹿田焼は一子相伝、各窯元に轆轤は2つしかありません。
この時は拓磨くんは7寸深皿、浩二さんは湯呑を挽いていました。

小鹿田は土を大事にするので、手を洗ったりするバケツに混ざった土もまた濾して使うそう。

こちらは黒木昌伸窯。左がお父上の富雄さん。
富雄さんはすり鉢を、昌伸さんは7寸皿を挽いています。
ある程度の大きさの皿は少し深めに挽いて、少し乾いた翌日に刷毛で押して平たく整えます。小鹿田の陶土の特性上、一気に平たく挽こうとすると縁が重さに耐えられず落ちてしまうのだそう。

上の画像だと分かりにくいかもしれませんが、坂本浩二窯と黒木昌伸窯では轆轤の回転方向が違うので、添える手の向きも逆です。九州は朝鮮系が由来の左回りが多いのですが、黒木昌伸窯は最初に習ったのが右回りの窯元だったそうで、右回り。よってこの2つの窯元、飛び鉋など模様の入り方も逆です。

そういえば昔そんな話も聞いていましたが、最近は全然意識していなかった店主。浩二さんからその話が出た時、そういえばこのところ、何とも思ってなかった・・・と恥じ入りました。どうも店主は全体的な印象でモノを捉えているようです。その割りに変に細かいことが気になったりもするのですが。
動画をInstagramのハイライトにUPしてますので、ご興味がおありの方はぜひ。

さてこちらは土を練る富雄さん。菊練りと言われる工程で、土に混じった空気を抜き、より陶土の密度を増して割れにくくします。力の要る作業で、夏は汗だくだとか。

使い込んで角の取れた、美しい道具たち。それから富雄さんのすり鉢。

淡々と挽いて、練って、乾かしているうつわを調整して、挽いて、売店の対応をして、また挽いて・・・。
「ずっと同じでつまらないでしょ?」と言われましたが、我々の手元に届くうつわ達がこうした仕事の積み重ねによるものだという実感は、やはり少しでもその時間を体感しないと得られないものなので、数時間でも拝見できて勉強になりました。これが小鹿田の日常なのです。

ただ、轆轤を挽く姿勢や細かな動きなどから上手下手を見極めるには・・・まだまだ修業が足らないなと思い知った店主です。

作り手は子供の頃から親の仕事を無意識に見てきて、20歳前後に本格的に仕事に入ります。
ずっとこの仕事に向き合ってきた人達と、紆余曲折ありながら漸く小さな小さな店を構えた店主では雲泥の差。

店主はこれまでいろんな仕事をしてきて、実は今も店とは違う仕事もしています。
割く時間が全てとは言わないまでも、時間をかけるほどに理解は深まるはず。それが当面の自身の課題だなと、そんな事も考えさせられた1日でした。

まだまだ修業中の身である店主ですが、この度ストックルームを整えました。
場所は福岡県糸島市二丈深江。福岡市内からのアクセスも良い場所です。

あくまでオンラインショップがメインで、店舗としての場所ではないので、予約制とさせて頂きます。ご不便もあるかと思いますが、お気軽にお問い合わせ下さい。糸島の夏を楽しみながら、ついでにご予定に入れて頂けたら嬉しいです。

詳しくはこちら

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