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2021-10-14

小鹿田の窯焚き

当店の小鹿田焼は、坂本浩二窯と黒木昌伸窯から仕入れています。
その2軒が今年は同じタイミングで窯を焚くスケジュールだったので、この機会に窯焚きの様子を見ておきたいなと思っていました。

火入れ翌日、台風が逸れたお陰で雨も降らず良かった良かった、と向かった小鹿田の里。
皿山に入ったのは朝10時前、黒木昌伸窯が下から3番目の窯を焚いているところでした。
9月だというのにまるで真夏の暑さで、着いて早々前言撤回。

店主「窯焚きの時は晴れと雨とどっちが良いですか?」
窯元「雨」(即答)

ですよね・・・残念ながらこの日は青空・・・よってこの装備なワケですよ。
パラソルに扇風機に折り畳み椅子。必須です。

轟轟と燃え盛る窯の中を覗き込みながらひたすら薪をくべて行くのですから、暑いなんてもんじゃないでしょう。
店主なんて引いて見ているだけなのに汗だく。
今回は2番目の窯も昌伸さんのところなので、夜中0時くらいから10時間近くこの作業をしているとのこと。
大体1袋を焚き終えるのに4~5時間かかるのです。

よく3日に渡り夜通し焼き続けて、などと言いますが、一番下から火を入れて焚きはじめて一番上の袋(小鹿田の登り窯は8袋)まで焚き終えるのに、どうしたってそれだけの時間がかかるという訳ですね。
年数回のこととはいえ、ここだけ切り取っても大変な仕事。

そろそろ良いかな?という頃合いで、色見本を取り出します。
富雄さんと昌伸さんがちょっと笑ってるのは、店主が「おぉっ!!」とつい騒いでしまったから(笑)
急冷するのでいつもの飴釉の色にはなりませんが、釉薬の溶け具合などから判断するのだそう。

昔は色見本を使うことは無かったそうで、色見本で見定めるようになってからは歩留まりが減り、より良く焼けるようになったと坂本浩二さん。
初めて取り出した時は、飴の色が違ったので「釉薬の調合まちがえた!」と焦ったそうです。でもゆっくり窯の中で冷ました分はいつもの色で、ホッとしたのだとか。

薪を投げ入れていた口を泥で塞いで、4番目の袋を焚く坂本浩二窯にバトンタッチ。
既に連絡を受けた拓磨くんが待機しています。
ちなみに拓磨くんはサングラスをすると窯の中が見やすくて良いのだそう。昌伸さんはコンタクトに更に眼鏡をかけて臨むそうですよ。

上の画像、カラフルな水鉄砲を片手にいい大人が何を遊んでいるのか?と思うかもしれませんが・・・
窯の屋根や柱に点いた火を消すという大事な作業をしています。大真面目です。
いろいろ道具を使った結果、これが一番いいのだそう。

浩二さんも登場。麦わら帽子がよく似合います。
いつだってビーサンのイメージですが、窯焚きはスニーカー。

日陰ギリギリに待機。
ここから4コマ漫画スタイルで4枚画像をどうぞ。

しつこいようですがこの日は真夏の暑さ、日田は35℃を観測していた日。
この調子で様子を見つつ薪を次々に投げ入れていきます。
下の画像はまさに窯の中の様子を見定めているところ。

火の加減について拓磨くんに聞いたところ、ステーキを焼くのと一緒だと。
じゃんじゃん強火で焼いても表面だけ焦げてしまうし、火が弱すぎても生焼けで美味しくない。
ちょうど良く火が入って良い焼き上がりになるようにするのだと。なるほど!

ちなみにこの日、年に一度の陶土の搬入日でした。
各窯元のところに1年分の陶土がダンプで運び込まれます。
それではまた4コマ漫画スタイルでどうぞ。遠くに見える青いダンプにご注目。

小鹿田皿山の狭い狭いところを陶土を積んだダンプが何往復も!
通る度に自分が運転しているような気になってひやひやしてしまう店主。

そんなこんなでなかなか寝られない昌伸さん。ビール5~6本飲んだとかでいい感じの仕上がり。
この後また19~20時くらいから6袋目の窯焚きです。
「さすがに寝ないと」って、いやもう14時です。早く寝ましょう(笑)

さてそろそろ15時。4袋目が終盤です。
お気付きでしょうか?冒頭の画像で積まれていた薪が無くなっているのを。
無くなったどころか、途中軽トラで運び込んで少し追加していました。

薪は日田の製材所から廃材を買い取っています。
最近ではチップにして廃棄したり製品化する製材所が多いらしく、昔よりも入手しづらくなりつつあるそう。
小鹿田が小鹿田であるためには、様々な要素が極力今のまま保たれる必要があります。

重要文化的景観・重要無形文化財に指定されることにはメリットもデメリットもあります。
変わらないで欲しいと言うのは簡単ですが、生業として続けていくのは簡単ではありません。
でも、仕事をする環境が変わってしまえば焼きものそれ自体も変わってしまうもの。
次の世代が轆轤を挽く頃の小鹿田はどうなっているでしょうか。その頃にも変わらず通っていたいものです。

4袋目が焚けて、5袋目に移ります。また同じことの繰り返し。
続けて焚く時の2袋目ははじめついハイペースになりがちとのことで、意識して抑えると拓磨くん。
「高速降りた直後みたいな」。あぁ、なるほど。

それぞれ色見本を頂いて、見学はここまで。
右が黒木昌伸窯、左が坂本浩二窯の色見本です。
前述の通り、急冷した為に見慣れた飴釉と色が違うの、お分かりでしょうかね?

拓磨くんに「窯焚きの時ってどんな気持ちですか?楽しみ?大変?」と聞くと、
「プレッシャー感じます。これで失敗するとこれまでやってきたことが全部無駄になるんで、失敗できない」
何気なく答えてくれたんでしょうけど、なんだか重みを感じる言葉でした。
生業ってこういうことです。

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