美しく丈夫な“漆”
以前、とある仕事のまかないランチの取り皿が、漆のお皿だったことがあります。
その使い心地の良さにハッとして、それ以来少しずつ漆の品を集めています。
日本では縄文時代から使われていたとされる“漆(うるし)”。
漆の木に傷をつけると滲み出てくる樹液を、9000年以上も前から日本人は塗料としたり、接着剤としたり、装飾を施したり、様々な用途に使ってきました。
陶磁器などの修復方法である金継ぎに使われるのも、漆です。
漆器は丈夫で美しく、正しく使えば大変長持ちします。
しかし戦後、プラスチックなど安価な大量生産品に押されて使う人が激減しました。
そしていつの間にか高価で扱いづらい、というレッテルを貼られてしまったのです。
実際に使ってみると、実はそんなに扱いが難しいものではありません。
・水に浸けたままにしない。
・洗う時はタワシなど硬い素材のものではなく、柔らかいスポンジなどで。
(洗剤はOKですが、あまり洗浄力が強いものはおすすめしません)
・洗ったら濡らしたまま放置せず、しっかり乾拭きして乾かしてから仕舞う。
・直射日光の当たらない風通しのいい場所に仕舞う。極端な高温多湿の場所は避ける。
・乾燥し過ぎてひび割れることを避けるため、コンスタントに使う。
(使う頻度が低いもので乾燥が気になる時は、清潔な水をはったコップを一緒に置いておく)
・電子レンジ、オーブン、直火、食器洗浄機NG。
・中身を入れたまま放置しない。保存容器として使用しない。
漆器は素地が木ですから、落としたりぶつけたりすれば傷つきますし、時には割れます。
しかしそれは陶磁器も同じことで、漆器だからという特別なことではありませんよね。
なるべく傷をつけたくない方は、ほかの洗い物とは別にして洗って下さい。
仕舞う時は間に紙か布を挟み、陶磁器とは重ねないようにしましょう。
(私は細かいことは気にならないので、普段使いのお椀は重ねていますし、洗い物もいっぺんに済ませます)
使えば使うほどに美しくなるのが漆器の魅力。
日々使うことで艶が増していきます。
何よりも使い心地がとても良い。プラスチックには真似できない感触です。
漆のスプーンを使うと、手や口に伝わる温度がやわらかなことにも気付くでしょう。
一度使い慣れると、プラスチックには戻れなくなりますよ。